雪山の美しさが忘れられず…
昨年の GW に仙丈ヶ岳に登った時の雪山の景色の素晴らしさが忘れられず、また、雪が相当量残っているこの時期であれば、静かな登山が楽しめるかもということで、一の沢登山口から常念岳、さらに大天井岳を通って燕岳に行き、中房温泉に下山する 2泊3日の縦走を計画しました。
一の沢登山口 ~ 常念乗越

この3日間の天候に関して直前まではっきりせずヤキモキ。出発直前の予報では、下山する最終日に雨が降るものの荒れることはなさそうなのと、2日間は好天に恵まれそうということで予定通り出発。深夜浜松を出発して安曇野の温泉公園駐車場へ向かい、そこで車を止めて予約しておいたタクシーで一の沢登山口まで。というのも、下山した中房温泉からのバスでこの温泉駐車場まで戻ってこれると調べてわかったから。


登山口からしばらく樹林帯を歩くと、やがて景色が開けて気持ちの良い沢沿いを歩くことに。この日は清々しく晴れていて、多少汗ばむくらいの陽気。


この時期の登山では、渡渉が必要な場所がいくつかあって、そこそこ流れも早い状態なので注意が必要。実際、年配の女性が足を取られて倒れそうになったのを目にしたりしたこともあり気が抜けない。

眼の前に随分と上の方まで続く雪渓が見えてきて、ここでアイゼンを装着。この晴天で雪はだいぶ緩んでいる上に急斜面ということもあって、アイゼンをしていてもズルズルと滑ってなかなか大変。

上から降りてくる人たちが、かなり注意深く降りているのが気になって振り返ってみると、相当な急斜面であることが改めて認識できる。雪が緩んでアイゼンでもいまいちグリップが無いので、下りは結構怖いだろうな…


この一の沢の雪渓は、急な上に所々に落石もあって割と常に緊張を強いられながら登ることになる上に、この日は日差しもきつくて、登っている人は自分も含めて皆さん一様にヘロヘロになっている様子でした。


頑張って急な雪渓を登りきると、突然眼の前が開けてこの景色が飛び込んできて、思わず「おーっ」と声が出てしまいました。赤い屋根の建物は今日宿泊する常念小屋で、その向こうにはよく見ると槍ヶ岳の穂先も見えて感動…すごい場所だ。

常念小屋の入口はまだこんな感じでがっつり雪に覆われていて、ここ最近の暖かさでおそらく相当溶けたものと思うものの、いかに雪深い場所なのかがわかる。
常念小屋 ~ 常念岳往復
常念小屋にはお昼前に到着、外にあるテーブルで一休みしていると、この後どうします?みたいな会話に。疲れ切ったので、もうここで今日は終わり休みますという人もいれば、よく見ると一の沢から登ってくる時に会話した人たちは、すでに常念岳登って戻ってきましたという人もいて、皆ペースはそれぞれだなと。

常念小屋からは、岩礫の道が続く壁の先に常念岳がそびえているように見えて、ここまでの疲労を考えると、気持ち的に折れそうになったので、自分には珍しくたっぷり休憩を取ってから出発。




岩礫の道の上りは一の沢の雪渓の上りで疲れ切った足にはかなり大変ではあるものの、景色の素晴らしさは、本当に疲れを忘れてしまうほど。



常念岳山頂まであと少しという場所に、前常念岳・三股方面への分岐があり、ちょうどそのあたりから雪が多いので改めてアイゼンを装着して登る。もうあとちょっと!








常念岳山頂からの 360度の大展望は、本当に忘れがたい素晴らしい景色で、北アルプスに何度も来たくなるという登山者が多いのもよく分かる。自分の場合は、真っ青な青空と真っ白な雪と、雪が被っていない黒い部分のコントラストの美しさに思わず何度もため息が出るほどで、しばし山頂の絶景を楽しんでいました。
常念小屋

玄関部分は、おそらく外で見た大量の雪が残ったままということもあって、潰れないように何本かの柱で支えているようなのが印象的。常念岳山頂に登る前に受付は済ませてあって、荷物もある程度デポさせて頂いていたのでした。


この14号室は、混んでいる時は 6人部屋だと聞いているけど、それって足の踏み場のない位の状況になるわけで、やはり雪が残るこの時期はそれなりに空いていてありがたい。


最近の山小屋って、生ビールだけでなくてこういう地ビールとかも置いてあって嬉しい限り。まさかこんな場所で IPA を飲めるなんて。ビール飲むと疲労のせいもあって、急激に眠くなるけどご飯までは我慢我慢。

この日の夕食はハンバーグ、こんな場所にもかかわらず、これだけしっかりした夕飯をいただけるのは本当にありがたい限り。それにしても、皆さんよく食べる…ふと気づくと、ご飯を3-4杯ぺろっと食べてる人が多いのにはいつもびっくりさせられます。

もしかすると夕陽が槍ヶ岳を赤く染めたりするかなと期待をしていたものの、残念ながらちょっとそんな風にはならず。とはいえ、夕陽が北アルプスの山々の向こうに落ちていくさまはとても綺麗。本当は星空をみたいなと思っていたのですが、眠気にはどうにも勝てず…

普段は早朝に起きたりするとご飯は食べられないことが多いけど、山小屋だと不思議とぺろっといけてしまう。というか食べないとガス欠になって動けなくなるので、食べるのはとても大事。
常念小屋 ~ 横通岳

常念小屋から横通岳へのルートでは、左手に穂高連峰の山々が凄い迫力で見えていて、本当に目が離せない感じ。

標高が 2767メートルある横通岳、常念小屋から見ると相当なスケール感で眼の前にそびえていて、あれを超えて大天井岳の方に行くのかと思うと…緩やかな稜線歩きなのかなと高をくくっていると痛い目に合う感じ。



常念小屋からは、横通岳山頂を避けてトラバースする道もあるのだけれど、やはり山頂まで来たのは正解でここも眺めが本当に素晴らしい。また人がほぼ皆無で静寂の中で一人でこの景色を楽しめたというのも大きい。実際、前日の常念小屋では、今日燕山荘に向かうと話をした際に、この時期に向こうまで行けるの?という人もいた位で、この時期のこの道は登山者が極端に少ないみたい。
横通岳 ~ 大天井岳

横通岳から先はだいぶ雪の量が増えてきて、アイゼンをつけるほどではないけど、チェーンスパイク欲しいなという感じの道が…アイゼンを持ってきたので、チェーンスパイクは荷物減らすために持ってこなかったのが痛い。

ルートから分岐して ちょっと上がれば東天井岳へというところだけれど、この後のことを考えて体力温存のために、そのまま大天井岳へ向かう。


大天井岳へと続く稜線上にはかなりの積雪があって、全体的に真っ白な感じに。これはこれで、美しくいい感じ。ただ、天候が晴れていて踏み跡があるから良いけど、そうじゃないと思うとちょっと怖い。

そんなことを思っていたら、ふと目の前に雷鳥がいるのに気づき、さらに自分の位置からだと槍ヶ岳をバックに、ちょうど雪とハイマツの境目のところに雷鳥がいてくれるという絶好のポジション。手に持っていた携帯で急ぎシャッターを切った後で、一眼レフを取り出したところで飛び立って行ってしまった…残念。

その飛び立った雷鳥を目で追うと、これから向かう登山道から比較的近くのところに降り立ったので近づいてみると、つがいで散歩をしている様子。二匹とも冬毛から徐々に夏毛に変わろうとしているようで、なかなかかわいらしい。

それからしばらく、眼の前に大天井岳とその肩にある大天荘が見えてきた。ここで一休みをと思っていたら、この時期はまだ雪深いせいか残念ながら閉鎖中でした。


大天荘は実際かなりの部分がまだ雪に埋もれていて、そこから大天井岳への上りもかなりの積雪。やっとの思いで到着した大天井岳山頂からの眺めはやはり素晴らしく、誰もいない中で景色を独り占めして楽しみました。

この時、ふと気になったことが二つあったのでした。一つは、大天荘のところにあった燕岳方面を指している看板が自分が想定していた山頂を巻くトラバース道がある方角ではなく、大天井岳山頂を指していたこと。そして、その山頂には写真の通り燕岳方面への下山口という看板があったこと。なぜ気になったかというと、YAMAP のルートでは大天荘から大天井岳山頂を巻くようにトラバースする道を通って燕岳方面へ抜ける道以外示されていなかったためです。
アプリへの過信でミス
このトラバース道、大量の積雪があるこの時期は滑落と雪崩の危険があり通行出来ない状態(ちょっと覗いたけど、通れる気がしない)になっていたのでした。YAMAP のアプリでは、通行禁止のルートはルート選定の際にちゃんと注意が出たり選べなかったりするので、トラバース道を選べていた時点で通れるものと思い込んでしまったのがミスでした。どおりで、昨日の常念小屋で「そのルート通れるんですか?」という話が出たわけだ…
しかし、実際には燕岳方面への下山口と明確に示された案内があるということは、YAMAP のルートにはないものの、トラバース道の先で稜線の登山道に合流できる登山道があるに違いないということで、改めて大天井岳山頂に向かいました。
三百名山を制覇した強者に助けられた
山頂に戻ると、いかにも山が大好きという風情のおじさんが一人景色を楽しんでいました。そこで、これから燕山荘の方に向かおうと思っているのだけれどと話してみると、詳細にこの先のルートについて教えてくれました。まず、アプリには出ていないかもしれないけれど、燕岳方面と大天井岳を結ぶ直登ルートがちゃんとあって(冬道)、かなりの急勾配なので注意は必要だけど、常念岳からここまで来れているのであれば問題はないと。また、多少道がわかりにくいところがあるけれど、途中に棒が立っているのが見えるはずだから、それを目指して降りていけば良いとのこと。
大天井岳 ~ 燕山荘


大天井岳からの燕岳方面への下山口はいきなりの急勾配の上、岩に雪がついていて滑落が怖い。アイゼンの爪をしっかり立てながらゆっくり降りる。しばらくすると、燕岳方面へ続く稜線が見えて、さらにおじさんが教えてくれた棒も確かにあり、なんとか降りていけそうだと安堵しました。

そんな緊張状態だったのをホッとさせてくれたのは、いきなり目の前に現れた雷鳥でした。人をあまり怖がらないこともあって、「どうしたの?」とでも言いたげな感じでこっちを見ていて思わずほっこり。
危なっかしい岩場だったので、近づくことはできませんでしたが、それでも比較的近くで雷鳥を見ることができてラッキー。

大天井岳への直登ルートを下るのは中々に大変ではあったものの、距離としてはそれほどあったわけではなく、なんとか無事に稜線の登山道に合流。ただ、全体的に雲の量が多くなってきて、ちょっと天候が不安な感じなので、先を急ぐくことに。

為右衛門吊岩、大下りノ頭と過ぎて、蛙岩へ。全体的に、稜線上の道ではありつつも、積雪のために夏道が通れない場所が多く、ちょっとしたバリエーションルートのようになっていてかなり大変。実際、何度か道を間違えて、必要以上に稜線から離れてしまって戻るのに一苦労したりと、苦戦しました。

蛙岩も一体どうすればよいのかしばらく考え込んでしまった場所。実際、写真の真ん中の恐ろしく狭い空間を反対側から抜けてきたのだけれど、夏道は雪がなく滑落の心配もないので、これを通らず巻いて抜けるみたい。雪が残るこの時期は、この狭い穴を抜けるので荷物含めて大苦戦…


悪戦苦闘の末にやっと燕岳が見えてきた。不思議な岩がニョキニョキと乱立し、この辺りの山々とは全く違う様子は、実際目の前にするとかなりびっくり。

燕岳を目の前に、やっとのことで燕山荘に到着。計画通りではなかった部分があったり、細かいこととはいえ、稜線上の登山道も雪で思うように進めずバリエーションルートのようになっていて、だいぶ苦労しました。
燕山荘

燕山荘の中に入るとスタッフの方が「お疲れさまでした!」と登山者を暖かく迎えてくれます。どちらからですか?という問いに、常念小屋から来ましたと答えるとだいぶ驚いていて、この時期は大変だったでしょう?燕山荘から常念小屋に向かった人も今日は数人しかいなかったですよ、とのこと。


燕山荘はかなり大きな山小屋で、この日は第一別館の 1F の下の部屋の一つを一人で使わせていただきました。おそらく夏の混雑する時期だと、一部屋あたり 3-4人が寝るような形でだいぶぎゅうぎゅうになりそう。


燕山荘のおみやげコーナーはすごく充実していて、あっ欲しいなと思うものがちらほら。それに、モンブランのケーキとか美味しそうなものも色々。中房温泉から上がってきて、燕岳を登って宿泊するには最高な場所なんだろうな。明日天気が崩れるのがわかっているので、本当は 1時間程度で往復できる燕岳に今から行きたいところだけど、疲労困憊でギブアップ。でもここだったらまた来ても良いなということで、燕岳登山は次回の機会に。

夕食時には、安曇野山岳警備隊の方や燕山荘オーナーの方のお話があり、色々と勉強になったのだけれど、その中で特にどきっとしたのが今日通ってきた大天井岳のこと。まだ雪が残るこの時期の大天井岳は「魔の山」と言われているようでこの一帯での遭難・滑落が絶えない場所なのだとか。今回、ルート選定時のミスがあった中で、熟練の登山者が偶然いて情報をもらえたこともあって、割と安心して進むことができたけど、本来こういうミスはあってはならないところで気をつけないと。
燕山荘 ~ 中房温泉

翌日は予報通りの雨。でも、土砂降りというわけでもなく、レインウェアで十分しのげる程度ということで、中房温泉に向けて出発。




燕山荘からは合戦尾根を通って合戦小屋まで一気に降りる。夏場は、この合戦小屋では美味しいスイカが出されるとのことだけど、この日はまだ早い時間だし開いていない。そこから、富士見ベンチなどの休憩所を通りながら 3時間弱で中房温泉に無事到着。


中房温泉の下山口には、一つだけ登山者も入れる日帰り温泉施設があるものの、残念ながら興味深い宿など含めて、そもそも温泉街には宿泊者以外は入ってはダメとの看板が…残念すぎる。バスの時間もあったので、中房温泉に入ることは諦めて、車を止めてある場所にある安曇野のしゃくなげの湯を楽しんで浜松に戻りました。



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